疾走するアヴァンギャルド
関東大震災からわずか10ヵ月、 復興の槌音響く都市トーキョーのただ中に、日本初の近代劇場「築地小劇場」が生まれた。やがて「赤い伯爵」と呼ばれることになる華族出身の演出家・土方与志、新興芸術の明星・村山知義ら、のちの日本芸術界をけん引する若き天才たちは模索する。芸術とは、創造とは、未来とは…?世界と日本が切実に通じ合い、演劇、文学、美術、音楽、すべての芸術がぶつかりあい、スパークしてエネルギーを発した時代-モダンなコスチュームの「案内嬢」をシュールな狂言回しに、伝説のこけら落とし公演『海戦』が劇中劇として舞台上によみがえる。 破壊、そして混沌からの創造にかけた表現者の魂が、2011年の表現者、やなぎみわの独自の視点と手法によって立ちあがります。
ストーリー
1924年6月、土方与志と小山内薫が指揮を執る築地小劇場は混乱の坩堝にあった。旗揚げ公演は何と三作品、小山内薫演出「白鳥の歌」「休みの日」そして土方与志演出「海戦」。ドイツ戯曲R.ゲーリングの「海戰」は、前代未聞の設計と舞台構造を持つ小劇場で上演され、聞き取れないほどの早い台詞、絶叫と轟音のリアリティで人々を驚かせた。全編のほとんどが、洋上に浮かぶ戦艦の内部で繰り広げられる「海戦」の稽古と、築地小劇場の船出。2隻の「船」の行く末が重なる。「偉大な明治」と「激動の昭和」のはざま、大正デモクラシーの時代を背景に、モボ、モガが闊歩し、多様で未分化な芸術運動が花開いた大正期。明治以来の近代国家体制が瓦解した帝都の混沌の中で誕生した、歴史的舞台をめぐる劇中劇。
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